2014-05-01から1ヶ月間の記事一覧
プロローグ 「最後までボールから目を離すな」とは、少年野球で徹底的に教えられる技術だ。 子供の頃に教わることには、人生の教訓が含まれている。「豆板醤を買って」と頼まれた私が、棚にある豆板醤から目を切って、その横にある“豆鼓醤”を手にして、その…
プロローグ 男ってのは、結構ツマラナイことにチャレンジし続けるものだ。 例えばこんなこと。 「乾燥スパゲッティ90gを一発で掴んで量り取る」で、毎回悔しい思いをしている。「どうしたの?」 「いや、なんでもない」 男はツマラナイチャレンジを口には出…
プロローグ 庭の畑から2個のタマネギを引っこ抜いて、はさみで葉と根を切り落とし、ざっと庭の水道で洗う。 キッチンに入り、頭と尻尾を包丁で落として、皮をはぎ、丁寧に洗う(なんか“タマネギ”に対する表現ではないけど)。 包丁で、自分の出来る能力限界…
プロローグ 「ほら、見てごらん。この餃子は君が包んだもの、こっちの餃子は俺だ。餃子の包み方って、十分に個性的だと思わないか?」 「で?」 「“冷凍餃子殺人事件・・・犯人は、この餃子を包んだヤツだ!”ってのはどう?」 「あの、くだらないことを言う…
プロローグ 「簡単なことを簡単にやる」・・・とても難しい。 フライパンを握った私は、“玉子をかき混ぜるだけの簡単なこと”をちゃちゃっとやるつもりだった。しかし現実は、“玉子をかき混ぜるだけの簡単なこと”ではなかった。 私は“とろとろにするための火…
プロローグ 私が田舎から東京の大学に進学したのはバブルの最中のことで、巷にはジュリアナ東京なるものが存在することは知っていた。しかし、田舎者は当然のように世間からは取り残されるもので、“そういう所へは近づかない自分”として自らを規定することで…
プロローグ 「あのさ、ぶっちゃけ、あんたの話って前置きが長過ぎんだよね。邪魔なの。面倒なの。ほら、スペアリブの骨。あれ、邪魔でしょ。あんな感じ。もっとちゃちゃっとできんのかね?口に放りこんだら終わり的な、ね。」
プロローグ 火を消して煮汁が冷えていく、まさにその時こそ、「大根に煮汁が沁み込む時」。 まるで、遠ざかる彼女の背中を見ているその瞬間の心のように。
プロローグ 大学入学と同時に一人暮らしを始めたのだが、その時のアパートは小さなキッチン(と呼べるほどのものではなかったが)とユニットバスと、そして4畳半ほどの居室だった。おそらく全面積を足しても6畳に少し足が出る程度だったろう。 布団とギター…
プロローグ 「えーと、君の長所は・・・深慮遠謀タイプで思いつきでは行動しない・・・なるほど。で、好きな言葉は“思い立ったが吉日”、ね。矛盾ってほどではないね。ま、いいでしょ。スーパーで“海老20尾500円”ってのを見て、高いか安いか、うまいか、そも…
プロローグ 「ちょっと君、いいかな?この間の会議のお茶の話だけど。確かに予定参加者から人数は減ったよ。だけどね、いくらお茶碗が余ったからと言って、各自に2つずつ茶を配らなくてもいいんじゃないかな?」 「・・・。」 「つまり何が言いたいかという…